《検定雑感》第152回日商簿記検定

【2級】
今回の商業簿記は、基本論点を確実に学習していた受験者が合格点に達するという、まさに実力がそのまま表れる試験だったように思います。文章表現も若干難しいものを含み、ボリュームも適度にあり、制限時間内に答案用紙をどう埋めるかという時間配分まで問われていたように思います。
いつも述べていることなのですが、山掛けは効かないことを胆に銘じないといけません。昨今の2級は、基本事項を総合的に理解し、スピーディーに解く能力が備わっていないと合格できない試験になっています。受験者には負担が大きいですが、基本事項を総合的に理解する学習を心掛けたいものです。
今回は第1問、第4問、第5問合計で45点、第2問16点、第3問10点以上で合格という試験でした。

第1問の仕訳問題に、商品保証引当金の洗替法の処理が出題されました。多くの受験者は洗替法は認められないということで無視して学習していたのではないでしょうか。会計処理としての洗替法は残っていることを忘れてはいけないということだと思います。表現に難解なものはありませんでしたが、正解を科目一覧から見つけなければいけない問題がありました。4つできれば安心でしょう。

第2問は現金預金に関する問題でした。多くの受験機関で予想していたようです。決算仕訳に関しては答案用紙に問題番号が付いていましたし、難易度もそれほど高くありませんでしたから、得点源にしたい問題でした。また銀行勘定調整表の作成も普段練習をしている内容そのままだったので、時間もそれほど掛けずに正答を導けたことと思います。

第3問は貸借対照表作成の問題でした。答案用紙の形式が若干異なっていましたが、解答に影響するということは無かったでしょう。難しい論点は税効果会計にあったと思われますが、この論点を抜かしても十分合格ラインは突破できる問題だったのではないでしょうか。12点狙いでよかったと思います。

工業簿記は、第4問は前回も出題のあった、苦手としている受験者が多い部門別計算の問題でした。前回のような補助部門費の予定配賦のような論点ではなく、予算部門別配賦表の作成と原価差異の処理の問題でしたので、多くの受験者が正答にたどり着いたのではないでしょうか。

第5問は標準原価計算の出題でした。テキストでは直接材料費、直接労務費、製造間接費に分類した原価標準からの説明が多いので、原料費と加工費の分類には戸惑った受験者が多かったことと思いますが、製造間接費の考え方を加工費に置き換えれば正答が得られたのです。

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【3級】
2019年度から出題区分が改定され、新基準に基づく問題がいくつか出題されましたが、難易度は中程度で、それほど高くはなかったように思います。新基準の基本的な論点をしっかり学習した受験者にはむしろ得点源だったかも知れません。その他の出題についても普段学習している基本からかけ離れていませんでしたので、確実に得点を伸ばせたのではないでしょうか。期待を裏切ることは無かったといってよいでしょう。全体の合格率は40%後半くらいになるのではないかと思われます。80点を超えている多くの答案用紙が浮かんできます。

第1問 仕訳問題
新基準から会社の設立が出題されましたが、予定通りの内容でした。他は過去に出題された問題と同レベルの内容でした。取引文から正しい勘定科目が選択できるか、特に手形借入金、租税公課などの勘定科目が適切に選択できたかが高得点獲得のカギになったことでしょう。また、仮払金の整理に若干難しさがありましたが、問題文に書かれたとおりに処理すれば正解が得られた問題でした。16点は取れたのではないでしょうか。

第2問
補助簿の選択に関する問題で、今年度から追加された固定資産台帳に記帳する取引が出題されました。各取引をメモに仕訳して該当する補助簿に〇を付ければよかった問題です。仕入や売上が仕訳される場合に商品有高帳に記入することを忘れなければ満点が取れたのではないでしょうか。

第3問
残高試算表の作成問題でした。新基準の内容からクレジット販売、差入保証金と支払手数料が出題されました。内容は前月末残高試算表に一日一取引の月中取引を加算・減算して残高試算表を作成する問題でした。ボリュームが若干多めでしたから素早い対応が求められました。今回は残高試算表の作成問題でしたので、合計試算表を作成してしまったというミスがなかったか少し心配です。後は集計ミスに気を付けていれば満足できる得点が獲得できたことでしょう。

第4問
伝票会計に関する問題でした。これまで3伝票制で論点とされてきた一部現金取引の2つの処理方法を問うものでした。それぞれで仕訳をして、伝票の記入面と照らし合わせれば正答が得られました。3伝票を学習する場合の重要な論点です。多くの受験者が満点を獲得していることでしょう。

第5問
貸借対照表と損益計算書の作成問題でした。多くの教育機関では精算表を第1予想としていたと思われますが、特に山を張らずに精算表の作成と損益計算書・貸借対照表の作成を練習していた受験者には満足のいく得点が獲得できたのではないでしょうか。新しい論点から消費税の整理が出題されましたが、多くの受験者は織り込み済みかと思います。他の論点は過去の出題と同レベルの内容でした。また、表示項目も答案用紙にほとんど印刷されていましたから、該当する箇所に金額を埋めるだけでした。そうはいってもこの種の問題を苦手にしている受験者は多くいますので、何とか6割以上の得点が欲しいところでした。

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