■全経簿記・第197回1級商業簿記・会計学
今回の検定は、厳しい内容で、ボリュームも多く、合格率は相当悪いという印象を受けています。商業簿記・会計学の出題形式は、毎回変化しています。特に第3問、第4問にこれまでにない論点と形式が登場しています。今回は第5問にも、何年も出題のなかった本支店会計が出題されました。
これから受験を考えている方は、合格点を突破するために弊社の「直前模試」に登載の問題で基本論点をしっかり身につけて欲しいと思います。新しい論点や形式の問題については、タイミングよく、弊社の「直前模試」に反映させたいと考えています。
第1問 理論問題
今回は、貸借対照表の記載内容、保守主義の原則とその注解、注解の引当金についてと債権の評価からの出題でした。企業会計原則本文と注解が組み合わされた変則的な出題であったように思われます。貸借対照表の記載内容については出来なくてはいけませんが、一般原則の保守主義の原則や簿記でも学習している引当金の設定要件や債券の評価については、何とか正解に結びつけられたのではないでしょうか。60%は得点したいところでした。
第2問 仕訳問題
今回の仕訳問題は、各取引を一歩踏み込んだ内容の出題が何問かありました。原始取引を想定しながら解答を導かなければいけませんでしたから、時間配分が難しかったことでしょう。最近の傾向としては、基本的な論点と新しい範囲の論点がバランスよく出題されています。山を掛ける学習方法は通用しないことを胆に銘じておきましょう。
創立費と開業費、割賦購入後の割賦金の支払処理、仕入割引、売上原価対立法による外貨建取引、減損損失の計上、保証債務の取崩が論点でしたが、どれも1級の範囲を超えているわけではないので、慎重に解答すれば高得点は可能でした。5題は正解したいところでした。
第3問 個別論点1
株主資本等変動計算書の出題でした。今までの出題内容は、剰余金の配当等と当期純利益の計上のみでしたが、今回は株主資本の計数の変動、繰越損失の解消、増資の論点が出題されました。授業の中では触れていると思いますが、過去問対策では触れなかった受験者が多かったと想像します。(弊社の「直前模試」ではこれらの論点は触れていませんでした。)ただし、書式にカッコが付いていましたから、想像力を働かせれば半分以上は得点できた問題でした。
第4問 個別論点2
連結精算表の作成問題でした。連結精算表の作成問題は、範囲指定のとおりの出題で、資産の評価替え、資本と投資の相殺消去を精算表に記入し、横展開して金額を埋めるという内容でした。事前学習も十分であったと思われます。また、「直前模試」にも同様の問題が登載されていましたから、多くの受験者は満点を獲得できたことでしょう。
第5問 財務諸表の作成
本支店合併の損益計算書と貸借対照表の一部の作成問題でした。本支店会計は何年も出題がありませんでしたから、弊社の「直前模試」にも登載していませんでした。多くの受験者には自力で解答欄を埋めることが求められました。ただし、決算整理事項等は個別財務諸表作成問題で出題のある有価証券の評価、商品の評価、減価償却費の計算、リース会計、経過勘定の整理等の内容でしたから、応用力を働かせて正答を導き出してくれたであろうことを願っています。ボリュームも多く高得点を確保するのは難しいところですが、半分は取りたいところでした。
■全経簿記・第197回1級原価計算・工業簿記
全経簿記検定の総合問題は、原価計算の手続と勘定体系がしっかり学習できていれば高得点が可能です。また、原価計算を理解する問題として、とても良い問題であると思います。原価計算を学習する人には一度は解いてもらいたいものです。
弊社の「直前模試」は、上述の内容を考慮し、本試験に十分対応できる内容構成をとっています。
また、最近の傾向として出題論点は安定しているのですが、出題の形式が変化しています。そこで弊社では常に傾向を分析し、受験者のニーズに沿った教材をこれからも提供していきたいと考えています。
第1問 理論問題
今回の理論問題は、文章中の正しい用語を選択する二者択一の問題でした。昨今は出題形式もいろいろ工夫されて、複数の原価計算基準に関連した出題がされています。(原価計算基準の内容から逸脱したものではありません。)工業簿記・原価計算を学習するにあたって理論的背景もしっかり学習する必要があります。今回は、原価の本質、原価部門の設定、原価差異の算定と分析、操業度との関連における分類、副産物と連産品の定義からの出題でした。これらは原価計算や工業簿記の会計処理上知らなくてはいけない内容であり、予想が外れていても会計処理から応用を利かせ部分点を獲得できる問題でした。弊社の「直前模試」などは部分点狙いに最適な内容を含んでいると感じています。
第2問 仕訳問題
仕訳問題は、出題区分表の全般から、材料消費高の計上、補修費の処理、未払賃金給料の計上、自家用機械の製造・振替、等級別製品の原価按分、本社工場会計の賃金給料の支払等、出題頻度の高い論点を中心に出題されています。出題されている論点は基本的かつ重要な内容です。弊社の「直前模試」の問題も同様の趣旨で登載しています。
第3問 個別問題
総合原価計算における仕掛品勘定の記入(副産物の分離計算含)の問題でした。原価配分方法に違いがありましたが想定内です。副産物は工程の終点で分離するのでその処理さえ間違わなければ満点を獲得できたでしょう。弊社の「直前模試」に類似問題(「直前模試」は先入先出法、本試験は平均法)を登載しています。
第4問 総合問題
今回は前回同様、個別原価計算の各勘定記入、製造指図書別原価計算表の作成を問うものでした。一つひとつ資料を読み込んで材料計算、労務費計算、製造間接費計算、製品の完成・販売の順に数値を算定して解答欄を埋めていけば高得点が可能でした。(ただし、第4問はボリュームが豊富なので素早い対応が必要でした。)
弊社の「直前模試」や過去問題を万遍なく学習した受験者には問題なかったはずですが、「前回出題されたから今回の出題はない」と山を掛けた受験者には厳しい結果になったでしょう。
■全経簿記・第197回2級商業簿記
これまでの試験で出題形式や内容はほぼ確定してきたようですが、今後、出題形式のパターン変更の有無、区分表にある未出題の論点がどのように出題されるか不透明なところがあります。区分表内で未出題の部分は各自目を通しておく必要があります。
弊社では今後の出題状況を見て「完全分類全経簿記2級商簿」「全経簿記検定試験PAST2級商簿」に手直しを加えていく予定です。合格するためには弊社発行の問題集で十分対応可能と考えておりますが、さらに受験者の要望に応えるべく情報提供に努めてまいります。
第1問 仕訳問題
定期的に出題されている手形の割引、未収利息の再振替、クレジット販売、増資、外貨預金、建設仮勘定、剰余金の配当等、重要な論点が出題されました。各取引の文章表現も特に迷うようなものはなく日頃学習している内容そのままであったと思われます。多くの受験者は安心して解答欄を埋めたのではないでしょうか。
第2問 計算問題
新傾向の形式と従来からの形式の問題がバランスよく出題されています。今回は旧形式である各項目データから期末現金・預金、期末純資産、売上総利益、当期純利益の金額を算定する問題でした。この種の計算問題は、資産=負債+純資産という貸借対照表の構造、収益-費用=当期純利益という損益計算書の構造と、両者の関係から各金額が算定可能です。このような関係を知っているかいないかで得点に差が出ました。
第3問 帳簿記入
取引から商品有高帳に記入し、純売上高、売上原価、売上総利益の金額を算定する問題でした。取引をメモに仕訳し、商品有高帳に慎重に記入することが求められました。ここでのポイントは、仕入返品や売上返品の処理方法をしっかり押さえていたかどうかです。仕入返品は仕入単価で払出欄または受入欄に記入、売上返品は払出単価で受入欄または払出欄に記入することができたでしょうか。また、売上原価は払出欄から算定することが分かっていたでしょうか。
第4問 伝票会計
集計表の作成と総勘定元帳・補助元帳に記入する問題でした。支払伝票、入金伝票に記入されている勘定科目の貸借を誤らないように慎重に集計する必要がありました。メモに仕訳をするくらいの慎重さが持てたでしょうか。総勘定元帳には仕訳集計表から転記、補助元帳には伝票からそれぞれ個別に転記されることを押さえていたでしょうか。十分に満点が狙える問題でした。
第5問 決算問題
今回も精算表の作成問題が出題されました。決算整理事項のうち、貸倒引当金の設定について付記事項で売掛金が減少しています。未払法人税等の金額は、中間申告額を差し引いた金額となります。(気がついたでしょうか。)他の整理事項は過去出題の内容と同様でしたので対策はできていたと思います。
■全経簿記・第197回2級工業簿記
2級工業簿記は、出題形式にやや変化がみられるものの、難易度的には、一定程度を維持しているといってよいでしょう。今回も一部に悩むところはありましたが、全般にこれまでと同等レベルであったと思われます。
2級工業簿記はパターン学習が可能だからといって、過去問題を暗記するという勉強方法ではいけません。本試験は目先を変えて出題しています。工業簿記の体系や手続きをしっかり理解する勉強方法を採ることが大切です。
第1問 原価の分類
実務色が強くなっている影響で判断が難しいところがありました。また、直接なのか間接なのかを悩むところがいくつかあったと思われます。3題は出来て欲しい内容でした。3.塗装工の賃金、5.薬品を詰める容器などは判断が難しかったと思います。
第2問 仕訳問題
材料の購入から材料消費、労務費の消費、製造間接費の配賦、製品の完成・引渡までの製造業の一連の流れを問うものでしたから、流れを理解していることが大切でした。ただし、3.に段取時間というこれまでにない要素が登場しました。段取時間は、機器の交換や材料の準備等に費やす時間で、直接労務費として処理します。これを誤ってしまうと4題のみの正解となってしまう厳しい内容でした。
第3問 総合原価計算
月末仕掛品の評価がポイントになりますが、その方法に先入先出法と平均法があります。今回は先入先出法による計算の出題でした。先入先出法は、先に投入したものから完成するという仮定ですから、月末仕掛品原価は当月投入費用にもとづいて算定されます。ボックスを用いて学習している受験者にとっては単純な計算であったと思われます。
第4問 勘定記入
勘定の流れを理解していない受験者は、正答を導くのに難渋したのではないかと思われる問題でした。金額欄が空欄になっていますが、同じ数字どうし、例えば材料勘定貸方①と仕掛品勘定借方①を仕訳して取引内容は何かを判断すると正答が得られます。他も同様に仕訳すると、すべての正答が見えてきます。決して難しい内容ではありません。流れをしっかり押さえていれば満点も可能でした。前回も同様の出題がなされました。
第5問 個別原価計算
個別原価計算による原価計算表の作成でした。内容はこれまでと同様ですが、一部に金額推定があり、目先を狂わされました。資料の2からすべて判明します。これが分かれば今までの問題と同様、材料商品有高帳から直接材料費の金額を、原価計算表の直接労務費合計額と直接作業時間の一覧から製造指図書別直接労務費の金額を、原価計算表の製造間接費合計額と直接作業時間の一覧から製造指図書別製造間接費の金額を算定することができます。時間がかかる問題ですが、慎重に解答すれば高得点が可能でした。
弊社では「zbⅡ工業bw(全経簿記2級工業簿記ワークブック)」を2019年4月に刊行しました。この書籍は工業簿記の体系や手続きの基本を重視した合格に役立つ書籍となっています。
基本を押さえておけば、2級工業簿記は合格点を獲得し易い試験のように思われます。これから受験を考えている学習者は、是非、弊社発行のワークブックで合格を勝ち取っていただきたいと思います。
■全経簿記・第197回3級商業簿記
第1問 仕訳問題
仕訳問題は、会社の設立、売上返品、給料の支払、手形受取による売上、手付金の充当と掛による仕入取引(消費税あり)、有価証券の購入、固定資産の取得、と重要な論点が繰り返し出題され、特に新しい論点は見られませんでした。取引文章も普段受験者が慣れ親しんでいる表現であったと思われます。基本的な仕訳問題を何度も練習した受験者は高得点を獲得したものと思われます。
第2問 計算問題
計算問題の出題傾向は3~4種にまとめることができますが、今回は、期首・期末の貸借対照表と損益計算書からの金額推定の出題でした。
この問題は、貸借対照表と損益計算書の構造(資産=負債+純資産、費用+当期純利益=収益)と両者の関係が分かっていれば満点が可能です。特に期首純資産と期末純資産の差額が当期純利益であり、損益計算書の当期純利益と一致していることが解法のポイントになります。
第3問 伝票会計
今回は前回同様、伝票の記入面から各勘定口座へ転記する伝票会計が出題されました。入金伝票と出金伝票の科目に印刷されている勘定科目の貸借を誤らなければ高得点が狙えました。伝票会計が苦手だという受験者は、伝票から直接転記しようとしないで、伝票の記入面をメモに仕訳して転記を考えるようにしましょう。
第4問 帳簿記入
今回は、商品有高帳の記入が出題されました。3級は先入先出法の記入が出題されます。先入先出法は、前商品の単価と異なる商品を仕入れた時の残高欄には、前仕入商品の下行に記入することがポイントです。払出欄の記入も単価が異なっていれば2行で記入します。よくある誤りは、払出欄の単価を売価で記入してしまう、というものです。払出欄の単価欄は仕入原価であることを誤らなければ高得点が可能でした。
第5問 決算総合問題
決算総合問題では精算表の作成が出題されました。損益計算書や貸借対照表の作成も範囲ではありますが、最近は出題がありません。決算整理事項の論点として売上原価の計算、貸倒引当金の設定、減価償却費の計上(直接法)、現金過不足の整理、費用の見越し・繰延べ、が出題されています。受験者がこれまで学習した内容がそのまま出題されたといってよいでしょう。金額の記入箇所を誤るというミスをよく耳にします。精算表の作成は横展開を慎重に行う必要があります。最低でも80%の点数は獲得したいものです。