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[Vol.2]出版社でありながら電卓を売る理由とは?~学校専用電卓の話~

英光社では、シャープ株式会社の商品開発チームの依頼を受け、商業高校や簿記専門学校などの生徒が使うのにふさわしい、学校専用電卓の開発に協力。独自のテキストや保証をつけた販売もしている。

[仕掛けたのはこの人]新井猛彦氏

父である先代の跡を継ぎ、株式会社英光社の代表取締役を務めながら、四六時中、誰もが楽しく学べる「仕掛け」を考えている新井氏。インタビューはこちら→
実は新井氏は、日本で電卓のことを語らせたら右に出るものはいないと思えるほど、電卓熱の高い人物でもある。出版社でありながら、なぜ電卓の開発に協力し、販売まですることになったのか、今回はその秘密を紐解いていこう。

先代のときから電卓にゆかりのある英光社

今でこそ数種類ある電卓の検定試験だが、最初に立ち上げたのは英光社である。
先代の社長であった新井氏の父が、技能評価のひとつとして独自に編み出したのだ。
これは、電卓を使って正しく計算をするというシンプルな検定であったが、現場の先生方や生徒たちに好評で、現在も商業関連の学校の定番検定となっている(※1)。

「この検定の価値は、単に電卓を使う技能を評価するだけではないと、私は思っています。現場の先生方から、勉強が苦手な生徒たちのモチベーションアップにつながっているという声をたくさんいただいたんです。」と新井氏は語る。
電卓検定は、他の検定に比べて合格にたどりつきやすいものだった。今まで勉強が苦手だった商業高校や専門学校の生徒が、この検定を受けて合格することで、「できた!」という成功体験を重ね、勉強に対するやる気を得ていったという。
このような経緯から、珠算九段を所有するソロバン派の新井氏が、電卓との関係を深めていくことになったのである。


※1)英光社が立ち上げた電卓検定は、その後、全国経理学校協会の電卓検定へと移行。
現在、英光社では『電卓オペレーション検定試験』を支援している。これは、検定の運営や採点をする先生方の手間を最小限におさえることで、生徒たちに少しでも多く検定を受ける機会を与えてあげられるようにしたいという思いからはじまった検定である。
「くらべてわかる電卓検定」参照→

メーカーから意見を求められ、学校専用電卓の開発に協力することに

「今から25年ほど前、商業高校の教科書に電卓が載ることになったんです。そこで、メーカーが学校専用の電卓を作って販売しようという流れになりました。そのうち、シャープの商品開発の責任者の方が、わざわざ奈良から弊社をたずねていらしたんです。教科書を使う生徒が持つのにふさわしい電卓はどんなものか、意見を聞かせてほしいと」
そこから、英光社は学校専用電卓作りに協力することになる。

「弊社はすでに教材の出版社として全国の学校とのつながりがありましたから、現場の先生方の意見を直接聞くことができたんですね。学校専用の電卓づくりで最も重視したのは、どんな機能よりも、『こわれにくいこと』『こわれても対応できること』でした」
真面目な生徒ほど、カバンの中は教科書など授業で使うものでパンパンになる。そんな中に電卓がつめられていれば、特に乱暴な使い方をしていなくてもこわれてしまう。それなのに、自己責任でまた新しいのを買わなくちゃいけないなんてかわいそうだと、新井氏は嘆く。

「必要なときにこわれて使えないって、つらいじゃないですか。だから、シャープさんにはできるだけ頑丈に作ってくださいとお願いしたんです。もちろん、機能とか使いやすさもいろいろと考慮していますが、とにかく丈夫であることが大前提だと」

メーカーでは補えない部分を独自に保証、教材出版としてテキストも作成

「どんなに頑丈でも、こわれることもある。ところがメーカー保証ってそんなには対応できない。それならって、うちが独自の保証プランを付けちゃったんです」と語る新井氏。
その保証とは、英光社で取り扱うシャープ製の電卓を学校単位で購入すると、在学中(最長3年間)は、故障・破損を問わず、全て新品と交換してくれるというもの。これってかなり太っ腹ではないだろうか。

「もちろん、故意に壊したものは除きますが、毎年100~150台くらいは新品と交換しています。負担にならないと言えばウソになりますが、少しでも学ぶ気持ちを大切にしたいから、弊社が販売に関与することで、こういう保証を設けられたんです。」
これが、出版社である英光社が学校専用電卓を販売している理由だったのだ。

「また、当初電卓には簡単な取り扱い説明書がついているだけでしたが、その後『完全攻略テキスト』と称した、練習問題つきのテキストをつけてセット販売をするようになりました。これがあれば、すぐに使いこなせるようになるという“仕掛け”です」と新井氏は語った。

  • 新しい道具を手にしたら、すぐに使ってみたくなるのが人のサガだろう。そのときのやる気を学習につなげようとするテキストの“仕掛け”からは、いかにもやる気仕掛け人の新井氏らしさがうかがえた。
    また、実際に使う生徒のことを一番に考えた提案をし、メーカーでは補えない保証まで請け負ってしまっているところが、先代のときから学ぶ人を大切にしつづけてきた英光社らしさにあふれている。
    シャープの学校専用電卓の制作に協力した人は、“学ぶ人の身になって、その姿勢を何よりも大切にし、全力でサポートする人”だった。