【商業簿記】
第1問の仕訳問題は難易度、範囲においてバランスの取れた問題でした。基礎学習がしっかりできている受験者にとっては、問題文を読み込んでいるうちに、解答すべき論点がはっきり見えたのではないでしょうか。パターン学習に終始していた受験生には、問題のポイントが見えにくく、解答しても不安が残る出題であったかも知れません。基礎学習がしっかりできている受験生とそうでない受験生に差が出る良問であったと思います。今後もこのような出題が多くあることを望みます。
第2問は、有価証券の期中取引と決算整理を勘定記入する問題でした。141回に有価証券の一連の処理を問う出題がされていましたので、対策は万全だったのではないでしょうか。ただし、有価証券の取得から決算整理、処分までの一連の取引を確実に身につけていないと高得点は望めない問題であったと思われます。
第3問は、予想どおりといいますか予想外といいますか、連結会計が前回に引き続き出題されました。連結2年目を設問していますので、難易度は高くなっています。今回は連結精算表の作成を問うものでしたが、連結企業集団内の債権債務と取引の相殺消去だけでも正解すれば半分は取れる問題でした。前回出題されたから今回は……と考えていた受験生は相当苦戦したと思われます。
【工業簿記】
第4問は、実際個別原価計算の仕訳の問題でした。普段、目にする実際個別原価計算と景色が異なっていましたが、勘定体系と仕訳、原価計算表の作成という原価計算の基礎が身についている受験生には、得点源だったのではないでしょうか。
第5問は、組別総合原価計算の原価計算表の作成の問題でした。加工費の予定配賦と工程途中発生の減損の処理ができれば高得点が可能な問題でした。普段学習している内容そのものズバリだったと思われます。
今回は第1問、第4問、第5問の3問で50点、第2問、第3問で20点以上を獲得し合格、というところでしょうか。
やはり今回も合格点を獲得するためには、「基本事項の徹底した学習」の大切さを身にしみて感じます。
第1問 仕訳問題
全体的にバランスの取れた良問でした。基礎学習の達成度が結果に表れる問題であったと思われます。
1.仕入割引の問題でした。「割引」という文言がどこにも見当たりませんが、基礎学習が十分な受験者は問題文から「仕入割引」に到達できたことでしょう。
3.株主資本の計数の変動についての出題でした。資本剰余金と利益剰余金の混同禁止の規定が存在していることを頭に入れておくとよいでしょう。よって、その他資本剰余金は資本準備金へ、繰越利益剰余金は利益準備金へ振り替えることになります。
4.売上割戻引当金の取崩しの問題でした。売上割戻引当金の設定方法を理解していることが前提になります。問題文を読んで売上割戻引当金の取崩しの設問だと気が付けば、正答に到達できたでしょう。
5.外貨建取引の振当処理に関する問題でした。取引時のレートと予約時のレートしかデータがないので、その差額を調整すればよいことに気が付かなければいけません。外貨建債権債務の為替差損益の算定は、債権・債務と円高・円安の関係を抑えることが重要です。
第2問 有価証券取引の一会計期間の勘定記入と金額の算定の問題でした。
この種の問題は、答案用紙を素早く埋めることが求められます。
取引日ごとにメモを取り、その都度、各勘定に転記することで80%は得点可能であったと思われます。
売買目的有価証券の取得時、売却時そして決算時までの一連の処理、満期保有目的債券の取得時、決算時までの一連の処理、これらを身につけている受験者には易しく映ったのではないでしょうか。
第3問 連結精算表の作成
支配獲得時の修正処理、のれんの償却、当期純利益の非支配株主への振替、連結会社相互間の債権債務、取引高の修正消去、未実現利益の消去(商品、土地)を精算表に記入して解答を求めるものでした。注意点は以下のとおりです。
(1)貸借対照表と損益計算書のみの作成であること。
(2)個別財務諸表の表示が、借方なのか貸方なのかを判断しなければいけないこと。通常この形式であると貸方項目には( )が付いています。
(3)連結2年目であること。
以上の点に気を付けて答案用紙を埋めたかどうかで、得点が大きく異なったはずです。
(1)「利益剰余金」と「親会社に帰属する当期純利益」の関係が分かっていれば、利益剰余金の正答が得られる。
(2)精算表作成時の横展開でプラス、マイナスを誤らないように記入できたか。
(3)連結1年目ののれんの償却、当期純利益の非支配株主への振替を忘れていない。
今後も連結は、頻繁に出題されると思われます。山を張らずに学習することが必要です。
第4問 実際個別原価計算
実際個別原価計算の仕訳の問題でしたが、景色が今までの形式とは異なっていたため、一瞬、戸惑った受験生もいたことでしょう。日頃の学習で勘定体系と仕訳処理、指図書別原価計算表の作成を習得した受験生は、各プロジェクトを各製造指図書に読み替えればよいことが分かったと思います。その後は、自信を持ってプロジェクト別に原価を集計し答案用紙を埋めることができたと思われます。高得点が可能です。
第5問 組別総合原価計算
組別総合原価計算における原価計算表の作成の問題でした。本問にはポイントが2つあります。一つ目は、加工費の配分です。直接作業時間によって各組製品に予定配賦するので、原価データが使えたかどうかです。二つ目は、減損の処理です。この減損は工程の途中で発生していますので、完成品と月末仕掛品の双方に負担させることになります。材料費の月末仕掛品の計算は、投入数量から減損数量を差し引いた数量(度外視法)で計算します。このポイントを押さえている受験者は満点が取れたのではないでしょうか。
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